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あべのハルカス

超高強度コンクリート150N/mm2
地上300mの巨大ビルに挑む

プロジェクト概要

大阪・阿倍野区で堂々たる雄姿を見せる「あべのハルカス」。ビルとしては日本一となる300mもの高さを誇り、地上60階・地下5階のスペースに百貨店からホテル、オフィス、さらには美術館や展望台までさまざまな施設が集結。ビル内に自然光や外気を取り入れる吹き抜け空間を設けるなど、優れた機能と洗練されたデザインを兼ね備える商業施設です。
このあべのハルカスに採用されたのが、設計基準強度FC150N/mm2のハイスペックコンクリート。この超高強度コンクリートは、国土交通省大臣認定の取得まで概ね2年を要し、使用される主要材料の厳選と幾度の実験を重ね実現された経緯があり、国内で初めて在来工法【CFT用】として大量に使用されたこともポイントです。
今回は、あべのハルカスを担当した3人にこのビッグプロジェクトについて振り返ってもらいました。

プロジェクトメンバー

役職は2013年取材当時

大阪支店 副支店長 稲田 耕三

大阪支店副支店長

稲田 耕三

プロジェクト室 室長 坂田 信二

プロジェクト室室長

坂田 信二

大阪支店 課長代理 水口 諭

大阪支店課長代理

水口 諭

役職は2013年取材当時

生コンの登場で
工事現場が変わった!

稲田:あべのハルカスの周囲は繁華街で人通りも多く、西隣には路面電車も走っているため、進入経路や時間的な制約がありました。想定されるトラブルとその回避方法などは、統括責任者の坂田次長を中心に綿密なシミュレーションをして、私はコスト管理や関係機関との調整などを担当しました。

水口:私は実務面での窓口として工場と折衝を行い、ミキサー車で生コンクリートを納入するスケジュール作成などを行いました。あべのハルカスは、一般的な建設現場で使用する1日の生コン量の5倍程度を使い、工事が進められました。さらに、生コンクリートは工場から出荷して60分以内に打ち込むというシビアでタイトな要望がありました。工場から工事現場までは約8kmですが、時間がたつと品質が落ちてしまう。“生”コンというだけあって鮮度が命なんです。

坂田:ナマ物である生コンクリートを、最適の状態で納入するポイントは「品質管理・輸送管理・コスト管理」の3本柱で、打設部位と工法に応じた総合管理計画を遵守することと、施工者様との綿密な意思の疎通が求められていきます。

実務の中で
管理能力と対応力を磨く

水口:あべのハルカスでは、これまでの経験や知識だけでは通用しないことを実感した現場でした。だからこそ臨機応変の対応力を磨くことができたと思います。

坂田:ハイスペックのFC150N/mm2のコンクリートに限らず、打設箇所に応じてさまざまな特殊生コンクリートを使用したため、多数の生コン工場に供給して頂きました。生コン工場のそれぞれの特性と品質管理能力を把握して、打設部位ごとに割り振っていくのは、大変な作業でしたね。

水口:はい、とにかくたくさん質問と相談をさせていただきました。

坂田:水口君は、まずは自分でしっかり考えて、自分なりの結論や提案を真正面から伝えてくれるので、応え甲斐がありましたね。

稲田:とにかく自分で調べ、自分なりの結論をしっかりと持った上で相談をもちかければ、そこからさらに深い部分は経験豊富な先輩・上司が、望んだ答え以上のことを教えてくれる風土がある会社ですね。このプロジェクトに限らず、計画を立て、物事を進めるには知識が不可欠です。私は坂田次長と水口君の間に立ちながら、水口君の成長を感じましたし、自分もひと回り大きくなれた気がしています。

生コンクリートで人をつなぎ、
社会に貢献する

坂田:若い社員は、まずは基本的な知識を蓄えて、将来的には用途に応じてどのような生コンクリートが最適なのかを判断できる目利きの能力を是非とも養ってほしいと思います。セメントと骨材の特性や種類、配合方法について豊富な知識を持つことが、説得力のある企画提案にもつながるんです。また、難易度の高いプロジェクトを経験することで将来の財産にもなりますし、今回のプロジェクトでたくさんのノウハウを継承できたのではないかと思います。経験がなければ何も進みません。また、難しい案件であればあるほど、様々なニーズに対応していかなくてはならず、各々の立場になって考えることもできるようになります。広い視野をもってプロジェクトを進められる「全方位コーディネート力」が必然的に身についていくんです。

水口:仕事の相手は常に“人”です。生コンに向き合いつつも、そこには必ず取引先の担当者がいます。だからこそ、元気に明るく前向きに積極的にコミュニケーションをとることの大切さをあらためて感じました。このプロジェクトのチームは社内では3人ですが、施工者様をはじめとする多くの関係者と一丸となって頑張れたことは素晴らしい経験になりました。

坂田:忘れてはいけないのは、「我々は何を扱っているのか、いかにして社会に貢献するのか、いかなる社会的使命があるのか」という原点です。私たちは高品質なコンクリートの安定供給を通じて、事業主様、施工者様、テナント様、そして一般利用者様のすべてに対して安心と安全をお届けしなければいけません。これを忘れずに、今後もさまざまなプロジェクトにチャレンジしていこうと思います。